子供の頃、ある日母と一緒に服の買い物に行った時のこと。短めの半ズボンを履いて試着室から出て「似合うかな?」と聞くと、母は私に「白ブタみたい」と言い放った。
確かに小学生の頃は標準体型よりも少しふくよかだったし、肌の色も白かったから言ったのだと思います。
だけど昔からあまり考えず言葉を発する母の何気ない一言に深く傷ついた瞬間だったし、私の「太い=醜い」という固定概念が作られた瞬間でした。
摂食障害、それは高校3年生の秋から始まりました。
夏に入院していたせいもあり、体重が過去最低の48㎏に。
1か月ぶりに学校へ行くとみんなから「すごく痩せたね!」とたくさん声をかけられました。
体型を気にする思春期の私にはその言葉が快感でした。
だけど退院して時間が経つにつれて体重も体型も元通りになってきて、周りから「痩せたね」と声を掛けられなくなった頃、自分の現実と理想が上手く重ならない気持ちに苛まれ、過食嘔吐が始まったのです。
過食嘔吐とは、食欲のコントロールができなくなり我を忘れて食べ過ぎてしまい、その後「なぜ食べてしまったんだろう」と罪悪感や嫌悪感を抱き、なかったことにしようと自ら意図的に吐くことをいいます。
食べている時はもう吐くことで頭の中がいっぱいに。
だけど母親に気付かれたくなかったから、静かに吐くことを覚えるようになりました。
そうして冬が来て、高校卒業と同時に新社会人に。
自分の車を持ち、通勤の帰りに自分で買い物をして帰れるという自由が手に入ったことが、さらに摂食障害を悪化させる原因になりました。
社会人になっても「いい子」を演じていたため会社からの評価は大きかったものの、仕事が終わると疲れがドッときて辻褄を合わせるように過食に走りました。
仕事終わりスーパーに寄るとレジ袋2袋分の菓子パンやお菓子を買い込み、酷い時には家まで待てず車の中で食べてビニール袋に吐く始末。
そして帰宅して母の作ってくれた晩御飯を食べて、また気の済むまで吐く。その繰り返しでした。
ご飯を食べてお腹が出るのは当たり前なのに、それが許せなかったのです。
酷い時には過度な下剤の服用もしました。
食べても吐けば元通りになると思ったのです。プラスマイナスゼロだと。
でも実際は違いました。プラスマイナス、プラス。
少ない食べ物から栄養を少しでも摂取しようと、身体が脂肪を蓄える態勢になってしまうからです。
身体は生命を維持するため、骨や血液などより脂肪へ栄養分が供給されていることを優先するのだそうです。
その原理がわかっていてもなお、吐くことを辞められませんでした。
吐くことを辞める前に、過食がやめられなかったのです。
ところがある日、何の食べ物も受け付けなくなって、少しでも食べると気持ち悪くて吐いてしまう。
拒食症になってしまったのです。
体重はもちろん軽くなり、着られる服も変わってきて、不安定な心とは裏腹に容姿に自信が持てるようになりました。
「細い=美しい」「太い=醜い」それはもう呪いのように縛られた考え方でした。
そして数か月するとまた元に戻ってきて、太い自分が許せなくなり過食に戻る、そんな繰り返しでした。
48㎏だった体重はMAX63㎏へ。
そんな体重の増減で身体もしんどかったし、胃炎もきつかったです。
そして何より摂食障害に振り回される自分が嫌いでした。
18歳から始まった摂食障害は、23歳の頃まで約5年間続きました。
そんな私がなぜ摂食障害を克服できたか?
それは23歳の当時、付き合っていた彼(現在の旦那)の存在でした。
その頃は彼は会社勤めで平日の昼間勤務、土日休み。私は飲食店勤務で平日のどこかで休み、土日は絶対勤務、仕事は夜遅くまであり、2人の生活リズムが合わないため早くに同棲を開始しました。
当時一人暮らしをしていた私は一人分なんて面倒くさくて自炊などほとんどしていませんでしたが、彼と住むようになって、彼が喜んで食べてくれるのが嬉しくて自炊するようになりました。
最初の頃はそれでも嘔吐していましたが、だんだんと「好きな人と美味しいものを食べる喜び」がわかってきて、吐く頻度も減ってきて、いつの間にか過食嘔吐をやめられていたのです。
そしてもう一つ大きかったのは、自己肯定感が少しずつ育ってきたこと。
両親との関係が上手く築けなかったせいで自己肯定感なんて皆無だった私に、「そのままで十分素敵」だと毎日教えてくれました。
本当は自分の力で自己肯定感を高めるのが理想的なのかもしれないですが、時には誰かの力を借りたっていいと思うんです。
摂食障害を克服した今、太るのは今でも嫌だけど「太い=醜い」という考え方からも解放されました。摂食障害がつらい時には精神科の先生のどんな言葉も効かなかったし、一生これが続くのかと思ってつらかったけど、確かに克服できた私がここにいます。
今摂食障害で悩んでいてつらいというあなたも、きっと克服できる日がきます。
まずは「食べてもいいんだ」「胃に入ってもいいんだ」と自分を許してあげること。
そして食べても吐きさえしなければそんなに太りはしないという事実を知ること。
これを読んでくれているあなたはとっても自分に厳しい人なんだと思います。
どうか自分の味方でいてあげてください。
一生付き合っていくその身体を誰よりも大事にしてあげてください。
少しずつでいい、焦らなくていい、ほんの少しずつでもあなたの考えが緩みますように。
あなたの心が少しでも楽になりますように、願っています。
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